温泉・貸切露天風呂:新潟の温泉旅館「嵐渓荘」

2010年03月17日

限界集落ギリギリ温泉

僕の夢は子供に東京大学に入学してもらい、
僕がみることのできなかったもっと上の社会をみてきてもらうことです。
…かなり時代錯誤な夢だと思いますが、
東京に暮らしていた頃は思いもつかなかったそんな夢をふとおもいついたりします。

田舎暮らしには、井戸から見える青空を本物以上に青くみさせる力があるのかも、です。
その一方で、メーテルリンクの青い鳥のお話しこそが人生の真実と思ったりもします。
ま、青い鳥も最後はカゴから逃げていくんで、
どこにいたって、できあいの幸せなんてそうあるもんじゃないってことなんでしょうけど。

ともかく。
ここのところ、自宿の繁盛とともに、地域や業界の発展に駆り出されることが多く、
今まで考えていなかった課題を自分自身に抱え込むようになりました。
手にとる書籍も、WEBで検索するキーワードもだいぶ変化してきているのを感じます。

ちがう本を買いにいって、タイトルの“限界集落"、“温泉"にひかれてついでに購入。
これがなかなか今の私にいろんな示唆を与えてくれるマンガでありました。

どんな本かは作者あとがきを読むとだいたいわかりますので…
街を歩いてもネットを見ても、どこも「不況」がひどくはびこってます。
前作「銭」で取り上げたらよさそうな経済問題ですが、
今回の不況は今までのものとはどうもレベルが違う。
構造的な問題であるとも言われます。
お金がないならカードでキャッシングして海外旅行行こうよ。
と夜中にささやいていたクレジット会社はつぶれ、
飛行機会社すらつぶれる時代がやってきました。
「JALも機から落ちる」と今頭に浮かびましたが、
検索するとたくさん出てきそうなので確認しません。
漫画家という職業も、雑誌が次々廃刊し、本屋はつぶれ、
明日はともかく来年再来年の仕事は予想することができないほどです。
そんな閉塞した未来図に陰鬱としていた08年末、
伊豆の実家に帰ったら、そこはそこで「若者がほとんどいない」という
もっと本質的に閉塞した世界が待っていました。
今始まったことではないにしろ、いつの間にか実家あたりも「限界集落」の仲間入りをしてました。
実家を出て東京で暮らしているものが言うのもなんですが、
人がいなくなるのはその場所に人を集める魅力がないからです。
廃村になる前に、なにか打てる手はないのか。
などとぼんやり考えていたら、年末の派遣村のニュース画像が流れてきました。
彼らをごっそり移住させたらどうなるだろう。
いや、どうせならゲームやらアニメやらフィギュアやら。
一癖あるために社会からはじかれた連中を集めてみたら…。
かつて取材した人たちが頭に次々浮かんできて、その濃さについ笑ってしまいました。
ということからこのマンガは生まれたのでした。
ストーリーはフィクションですけど、ベースはとてもリアルです。
どうるんだろうあのミカン畑は?イノシシや猿に食わせるしかないのか?
現実の社会がそうであるように、このマンガも一歩先がわかりません。
願わくば彼らと限界集落に明るい未来を。

荒唐無稽でマンガチックなストーリーですが、マンガだからそれは仕方ない。
しかし、ひとつひとつの要素としてはリアル。
ただ、田舎の描き方がかなりステレオタイプのように感じますが、
要素にしてみたらこんなものなのかな。

ひとつ見えてきたのは、都会でも田舎でも、
大人の社会は、嘘が本当になり、本当が嘘になるややこしさがある、ということ。
子供の社会は、まだ嘘は嘘で、本当は本当と、シンプルでいられたような気がする。
そういうややこしさに強くなっていかないといけないのかなと。
自分が抱え込みつつある諸問題を乗り越えていくのは、そういうバイタリティが必要。
いよいよ来年で40才。正念場なんでしょうね。しみじみ。

ともかく。

なかなか面白いマンガでした。おすすめします\(^^)/


ちなみに舞台は伊豆の鄙びすぎて潰れた温泉旅館です。
モデルは伊豆下田河内温泉・金谷旅館さんです。あそこの千人風呂にまちがいない。
※実際の金谷旅館さんは人気のお宿です。

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